後見人の報酬の決め方を徹底解説|相場・申立て手順・払えない時の対処

報酬の目安は管理する財産額で変わり、月額2万円〜6万円が中心です。特別な手続きをすれば、その分の上乗せ(付加報酬)も認められます。
この記事では、報酬の決まる仕組み、相場の内訳、立場別の違い、申立ての手順、払えないときの対処法までを、私が補助者として10年以上見てきた現場感とあわせて整理します。
後見人の報酬は誰がどう決める?仕組みをやさしく解説

まず押さえてほしいのは、報酬額を決めるのはあなたでも本人でもなく、家庭裁判所だということです。後見人が「報酬付与の申立て」をして、裁判官が事務内容と財産内容を見て金額を決めます。
報酬を決めるのは家庭裁判所
後見人は職について約1年経つと、家庭裁判所に報酬付与の申立てを行います。裁判所はその1年間の後見事務の内容と本人の財産内容を考慮し、審判で金額を決定します。
この審判は一度きりではありません。決定後も毎年1年ごとに繰り返し行われます。つまり「今年の報酬はいくら」と毎年ごとに裁判所が判断する仕組みです。
裁判官の裁量で金額が変わる理由
報酬には「これを払えば必ずこの額」という固定の料金表がありません。基本となる目安はありますが、最終的には裁判官の裁量で決まります。
理由はシンプルで、ケースごとに後見事務の負担がまったく違うからです。預貯金の管理だけで済む人もいれば、施設との交渉や不動産処分まで担う人もいる。同じ「後見人」でも仕事量が桁違いなので、一律にできないんです。
報酬を勝手に受け取ってはいけない

ここは本当に大事なので、はっきり書きます。家庭裁判所の審判を受ける前に、本人の財産から報酬を引き出してはいけません。
報酬は必ず本人(被後見人)の財産から支払われますが、その額を決めるのは裁判所です。先に自分で取ってしまうと、後で「使い込み」と見られかねません。私が見てきた中でも、ここを誤解して勝手に引き出し、後の報告で指摘された親族の方がいました。順番を守ってください。
後見人の報酬の相場と決め方の内訳
報酬は大きく「基本報酬」と「付加報酬」に分かれます。基本報酬は管理財産額で決まり、付加報酬は特別な行為1回ごとに上乗せされます。全体の中心は月額2万円〜6万円です。
毎月の基本報酬の目安
基本報酬とは、通常の後見事務(預貯金の管理、収支の把握、定期報告など)に対する報酬です。東京家庭裁判所の公式資料では、標準的な目安を月額2万円としています。
管理する財産が増えるほど、責任も作業量も増えるため、額も上がっていきます。下の表が財産額別の目安です。
| 管理財産額(流動資産の合計) | 基本報酬の月額目安 |
|---|---|
| 1,000万円以下 | 2万円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 3万円〜4万円 |
| 5,000万円超 | 5万円〜6万円 |
難しい業務で加算される付加報酬

付加報酬は、通常の管理を超える特別な行為をしたときに上乗せされる報酬です。たとえば不動産の売却、訴訟や調停、遺産分割協議などが対象になります。
金額は1回につき数千円〜数十万円とケースバイケースです。前述の地域後見推進プロジェクトでも、付加報酬は行為の難易度や成果に応じて判断されると説明されています。手間のかかる仕事をした年は、ここでしっかり申告するかどうかで結果が変わります。
管理する財産額に応じた金額の違い
基本報酬が財産額で動くのは前述の表のとおりです。ここで補足したいのが、全国平均の話です。

厚生労働省の資料によると、成年後見人の全国平均報酬額は月額2万8,600円です。地域によって大きく異なり、全国一律ではありません。東京家裁の目安はあくまで一つの基準で、あなたの地域の家庭裁判所がそのまま使うとは限らない点に注意してください。
課税の有無と支払い時期
受け取った報酬は所得になります。専門職でも親族でも、報酬を受け取れば原則として課税対象です。年間の合計額によっては確定申告が必要になるので、受け取った記録は残しておいてください。
支払い時期は、報酬付与の審判が出た後です。審判で決まった額を、本人の財産から後見人が受け取る流れになります。誰かに請求書を送るのではなく、裁判所のお墨付きをもとに本人の口座から精算するイメージです。
立場別に見る報酬の決め方の違い

「後見人」とひとくくりにされがちですが、弁護士や司法書士などの専門職か、親族かで報酬の出方は変わります。後見監督人が付くケースや、保佐・補助、任意後見でも仕組みが違います。ここを混同すると判断を誤ります。
専門職後見人と親族後見人の違い
報酬の決め方そのもの(家庭裁判所が審判で決める)は、専門職でも親族でも同じです。違いが出るのは実際の金額の傾向です。

親族後見人の場合、専門職よりやや低くなる傾向があります。専門職は法律事務として高度な対応を求められる場面が多く、その分付加報酬が付きやすいためです。とはいえ親族でも、施設対応や不動産処分など大変な仕事をすれば、きちんと申告すれば認められます。「親族だから請求しづらい」と遠慮する方をよく見ますが、その必要はありません。
後見監督人が付いた場合の報酬
親族が後見人になる場合、家庭裁判所が後見監督人(多くは弁護士・司法書士)を付けることがあります。この監督人にも報酬が発生し、これも家庭裁判所が決めます。
つまり後見人の報酬とは別に、監督人の報酬も本人の財産から出ていきます。親族後見人だから安く済む、と単純に考えていると見落とす出費です。監督人が付くかどうかは、財産規模や家庭の事情を見て裁判所が判断します。
保佐人・補助人の場合の違い
成年後見には、判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型があります。保佐人・補助人の報酬も、家庭裁判所への申立てと審判で決まる点は後見人と同じ仕組みです。
違いは仕事の範囲です。保佐・補助は後見より本人ができることが多く、関与する範囲が限定されるため、扱う事務の量に応じて報酬も判断されます。前述の東京家裁の目安が一つの参考になります。
任意後見人は契約で報酬を決める
ここは仕組みが大きく違います。任意後見は、本人が元気なうちに「この人に任せる」と契約しておく制度で、報酬は契約の中で定めます。
厚生労働省の解説によると、任意後見人には契約に基づいて報酬が支払われます。一方で任意後見監督人の報酬は、家庭裁判所に申立てをして裁判所の決定で支払われます。契約で決めるとはいえ、家庭裁判所の許可なく本人の財産から自由に受け取れるわけではない点は同じです。
後見人の報酬を受け取るための申立ての手順
報酬は黙っていても入りません。受け取るには自分から「報酬付与の申立て」をする必要があります。職について約1年経過したタイミングが起点です。ここからは具体的な段取りを書きます。

管轄の家庭裁判所に書類を提出する
申立先は、後見が始まった本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。報酬付与の申立書と、その年の後見事務の報告書類を添えて提出します。
提出後、裁判所が事務内容と財産内容を確認し、審判で金額を決めます。前述のとおり、これを毎年繰り返します。1年分の事務をまとめて区切って請求するイメージで、毎月コツコツ請求するものではありません。
申立てにかかる費用と必要書類
報酬付与の申立てには、収入印紙と郵便切手の実費がかかります。金額は申立て先の家庭裁判所によって細かく異なるため、管轄裁判所の案内で必ず確認してください。
必要になるのは、報酬付与の申立書、後見事務報告書、財産目録、収支状況の分かる資料などです。1年間の収支と財産の動きを裏づける書類が、報酬額の判断材料になります。日頃から通帳のコピーや領収書を整理しておくと、提出のときに慌てません。
事情説明書の書き方が結果を左右する
正直に言うと、ここが一番の差がつくポイントです。報酬付与申立事情説明書に、その1年でどんな苦労をしたかを具体的に書けるかどうかで結果が変わります。

「通帳を管理しました」だけでは伝わりません。施設の入居手続きで何回足を運んだ、医療費の支払いと保険の手続きを並行した、親族間の調整に時間をかけた――こうした実際の手間を、日付や回数を交えて書く。裁判官はこの説明から事務の負担を読み取ります。やった仕事は、書かなければ無かったことになります。
審判が下りるまでの期間の目安
申立てから審判までの期間は裁判所や時期によって幅があります。私の経験では、書類が整っていれば数週間から数か月で結果が出ることが多い印象です。
逆に、報告書類に不備があると確認のやり取りで延びます。早く確実に受け取りたいなら、提出前のチェックが近道です。
報酬が払えない・申立てが却下されたときの対処法
報酬は本人の財産から出ます。では本人にお金がほとんどない場合はどうなるのか。申立てが却下されたら泣き寝入りなのか。ここは不安が大きいところなので、対処法を整理します。
被後見人の財産が少ない場合の助成制度
本人の財産が乏しく報酬を捻出できないケースでは、成年後見制度利用支援事業という助成制度があります。市区町村が後見人の報酬の全部または一部を助成する仕組みです。
対象や上限額は自治体ごとに異なります。本人がお住まいの市区町村の窓口、または地域の成年後見支援センターに早めに相談してください。財産が少ないからと報酬付与をあきらめる前に、まずこの制度が使えないか確認するのが先です。
却下される主なケースと理由
報酬付与が却下される典型は、後見事務の報告が不十分なケースです。収支が合わない、財産の動きが説明できない、報告書類が揃っていない――こうした状態では裁判所も金額を判断できません。

もう一つは、事務の内容に問題があると見られた場合です。本人の利益にならない支出があったり、管理が適切でないと判断されれば、希望どおりにはいきません。逆に言えば、日々まじめに事務をこなし、それをきちんと報告できれば、却下を過度に恐れる必要はありません。
報酬額に納得できないときの対応
審判で決まった額が思ったより少ない、ということは起こり得ます。報酬の決定は裁判官の裁量が大きいぶん、期待とのズレが出やすいんです。
納得できないときは、まず翌年の申立てに向けて事情説明書の書き方を見直すのが現実的です。やった仕事を具体的に伝えきれていたか。付加報酬の対象になる行為を書き漏らしていなかったか。次の審判は1年ごとにやってくるので、改善の機会は毎年あります。
モデルケースで見る後見人報酬のリアルな金額
数字だけ見てもピンと来ないと思うので、財産額や業務の違いで報酬がどう変わるかを具体例で示します。額はすべて東京家裁の目安に基づく試算で、実際は裁判所の判断で変わります。
財産額が少ない家庭のケース
本人の流動資産が800万円、年金で生活費をまかない、後見事務は預貯金管理と定期報告が中心のケース。財産額1,000万円以下なので、基本報酬の目安は月額2万円です。

年間にすると24万円前後が一つの目安になります。特別な手続きがなければ付加報酬は付きません。シンプルな管理だと、このあたりに落ち着くイメージです。
不動産売却など付加報酬が付くケース
流動資産が3,000万円あり、その年に本人名義の自宅を売却したケース。財産額が1,000万円超〜5,000万円以下なので基本報酬の目安は月額3万円〜4万円。これに不動産売却の付加報酬が加わります。
付加報酬は1回につき数千円〜数十万円とケースバイケースで、売却の難易度や金額で変わります。手間のかかった年は、基本報酬に相応の上乗せが乗る可能性がある、ということです。
親族後見人が報酬を受け取った体験談
私が補助者として関わった案件で、息子さんが父親の後見人になったケースがあります。最初は「家族の世話でお金をもらうなんて」と報酬付与に消極的でした。
でも実際は、施設の手続き、病院の付き添い、他のきょうだいへの説明と、相当な時間を割いていました。事情説明書にその実態を一つずつ書いて申立てたところ、報酬が認められました。「やった人にしか分からない苦労が、形になって報われた」と話していたのが印象に残っています。報酬を受け取ることで、他の親族との不公平感も和らいだそうです。遠慮する理由はありません。
後見人の報酬の決め方によくある質問
最後に、読者からよく一緒に検索される疑問をまとめます。ここまでの内容の要点確認にも使ってください。
よくある質問
報酬は、まじめに後見事務をこなしたあなたが正当に受け取れるものです。遠慮して申立てをしないのが一番もったいない。まずは通帳のコピーと領収書を1年分そろえることから始めてください。それが報酬付与申立ての第一歩です。
- 名古屋市成年後見支援センター(報酬に関するFAQ)
- 第二東京弁護士会(成年後見人の報酬の解説)
- 地域後見推進プロジェクト(後見人の報酬)
- 東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」(公式PDF)
- 厚生労働省資料の要約(成年後見人の平均報酬額)
- オリックス銀行(成年後見人の報酬の目安)
- 厚生労働省「成年後見はやわかり」(任意後見制度)
- 東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」(公式PDF)
- 名古屋市成年後見支援センター(報酬に関するFAQ)
- 第二東京弁護士会(成年後見人の報酬の解説)
- 地域後見推進プロジェクト(後見人の報酬)
- 厚生労働省資料の要約(成年後見人の平均報酬額)
- オリックス銀行(成年後見人の報酬の目安)
- 厚生労働省「成年後見はやわかり」(任意後見制度)
- 相続・後見プロ(成年後見人の報酬)
