成年後見人に親族がなれない条件とは?欠格事由と対処法を解説

私は司法書士事務所で後見申立ての案件に10年以上関わり、自分の父の申立ても経験しました。その立場から、なれない条件・選ばれにくい理由・却下されたときの対処まで、今すぐ動けるレベルで噛み砕いて書きます。
この記事を読めば、自分の家族が欠格事由に当てはまるか、申立ての費用と期間の目安、家族信託など代替策の選び方まで一通り判断できます。
成年後見人に親族がなれない条件とは?まず結論

成年後見人になるのに、特別な資格はいりません。親族であることも、専門職であることも必須ではないんです。家庭裁判所が本人の事情を見て選びます。
つまり「親族だから絶対なれない」のではなく、「法律で決まった欠格事由に当てはまる人」と「裁判所が不適切と判断する事情がある人」がなれない、という整理になります。
親族が後見人になれる場合・なれない場合の違い
なれる典型は、本人の財産がそれほど多くなく、家族間に争いがなく、候補者がきちんと管理できる場合。実際にこのケースで親が後見人に選ばれた例を何件も見てきました。
なれない・選ばれにくいのは、後で詳しく書く欠格事由に該当する場合か、本人と利害が対立している場合です。
| 状況 | 選任の見通し |
|---|---|
| 財産が少なく家族に争いがない | 親族が選ばれやすい |
| 財産が高額・収益不動産がある | 専門職が選ばれやすい |
| 相続で本人と利害が対立 | 親族は選ばれにくい |
| 欠格事由に該当(破産者など) | 法律上なれない |
法律で定められた欠格事由(破産者・未成年者など)
成年後見人になれない人は、民法で限定列挙されています。つまりこのリスト以外の理由で「資格なし」とは言えません。
| 欠格事由 | かみ砕くと |
|---|---|
| 未成年者 | 18歳未満の人 |
| 免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人 | 過去に家庭裁判所から後見人等を解任された人 |
| 破産者 | 破産手続中で復権していない人 |
| 本人に訴訟をしている・した人とその配偶者・直系血族 | 本人と裁判で争っている関係者 |
| 行方不明者 | 所在が分からない人 |
よく誤解されますが、過去に自己破産しても「復権」していればこの欠格事由には当たりません。ここは相談でもよく聞かれるポイントです。
本人と利益が対立する立場の親族は選ばれにくい
欠格事由には当たらなくても、家庭裁判所の判断で選ばれにくい人がいます。代表が、本人と利害が対立する親族です。
例えば、本人と同じ相続の当事者になる子。本人の財産を守る立場と、自分の取り分を増やしたい立場が衝突しかねません。これは民法の欠格事由ではなく、あくまで選任判断上の事情です。
親族が選ばれにくくなった近年の運用と実態
「家族なら当然なれる」という感覚で来られる方が多いのですが、実際は親族以外が選ばれることのほうが多い。ここを知らないと申立てで面食らいます。

親族選任率の推移と裁判所の方針
親族が成年後見人に選ばれる割合は約2割にとどまる、とする解説があります。残りの多くは弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職です。
正直に言うと、この数字は公的統計そのものではなく解説値です。最新の正確な傾向を確認したいなら、最高裁判所の司法統計を直接見るのが確実だと私は考えています。
家庭裁判所が親族以外を選ぶ主なケース
私の経験で多かったのは、財産が高額、不動産の管理や売却が絡む、本人名義の事業がある、といったケース。専門的な管理が必要だと判断されると、専門職が選ばれます。
親族の使い込みが疑われる事情がある場合も、当然ながら専門職に振られます。
親族間で候補者が対立した場合の判断基準
兄弟で「自分が後見人になる」と譲らない——これも選任が難航する典型です。家族の意見がまとまらないと、裁判所は中立な専門職を選ぶ傾向が強い。
裁判所が見るのは「本人にとって誰が最適か」です。候補者の都合ではありません。揉めているならいっそ専門職を、と私は説明することが多いです。
成年後見人が決まるまでの流れと費用・期間
後見人が家庭裁判所により選ばれるのは「法定後見」です。ここでは法定後見の申立ての流れを、実務の手触りで説明します。

申立てから選任までのステップ
大まかには次の順で進みます。書類を集める段階が一番時間を食います。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 相談 | 市区町村の窓口や家庭裁判所の手続案内で確認 |
| 2. 書類準備 | 申立書・診断書・本人情報シート・戸籍・財産資料など |
| 3. 申立て | 本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出 |
| 4. 調査・面接 | 裁判所が候補者や本人の事情を確認 |
| 5. 審判・選任 | 後見人が決定し、登記される |
診断書と本人情報シートの準備
申立てには、本人の判断能力を示す医師の診断書が要ります。あわせて、福祉関係者が本人の生活状況を記す本人情報シートを用意すると、診断がスムーズです。
父の申立てのとき、診断書を書いてもらう予約が取りにくく、ここで2週間ほど待ちました。早めに病院へ動くのが正解です。
申立て費用・鑑定費用・期間の目安
費用は、申立て手数料・登記手数料・診断書代・必要書類の取得費などがかかります。判断能力の判定で鑑定が行われると、その費用が別途上乗せされます。
正直なところ、提示できる確かな金額表は今回の出典にありませんでした。具体額は管轄の家庭裁判所や厚生労働省の案内ページで確認するのが安全です。ここで適当な数字を出すほうが危ない。
親族が後見人になった場合の報酬と義務

「親族がやれば報酬がかからずお得」と思いがちですが、ここは要注意。報酬は家庭裁判所が決めますし、義務の負担は親族でも専門職でも同じです。
専門職と親族それぞれの報酬の考え方
成年後見人の報酬は、家庭裁判所が本人の財産や事務の内容を見て決めます。親族が無報酬を選ぶこともありますが、必ずしも得とは限りません。
親族でも、財産管理や報告の手間は確実に発生します。仕事や育児の合間にこれを毎月続けられるか、現実的に考えてほしいところです。
厳格な財産管理と年1回の報告義務
後見人は、本人の財産を本人のためだけに使い、家計簿のように出入りを記録します。そして原則として年1回、家庭裁判所へ報告します。
これが想像以上に重い。レシート1枚から管理する感覚です。親族だからとどんぶり勘定にすると、後で疑われます。
後見監督人が付くケースと役割・費用
親族を後見人にする代わりに、家庭裁判所が「後見監督人」を付けることがあります。監督人は後見人の仕事をチェックする役割で、多くは専門職です。
監督人が付くと、その報酬は本人の財産から支払われます。つまり親族が無報酬でも、監督人分の費用はかかる。「親族なら完全に費用ゼロ」ではない点は押さえておきたいです。
親族が後見人になるリスクと注意点(実例で解説)
ここが一番伝えたいところ。親族後見にはリスクがあり、よく考えずに引き受けると後悔します。

横領・使い込みで処罰された失敗例
後見人が本人の預金を自分の生活費に流用し、業務上横領で問題になる——こうしたケースは実際にあります。親族でも例外ではありません。
「親の金だから少しくらい」が一番危ない。本人の財産は本人のもの、という線引きを崩した瞬間に、信頼も立場も失います。
後見開始後にできなくなること(自宅売却・生前贈与)
後見が始まると、本人の財産を自由に動かせなくなります。特に節税目的の生前贈与は、本人の利益にならないため原則できません。
本人の自宅を売る場合は、居住用不動産なら家庭裁判所の許可が必要です。相続税対策のつもりが、全部止まる。これに驚く家族はとても多い。
| やりたいこと | 可否 |
|---|---|
| 本人の生活費・医療費の支払い | できる |
| 本人の自宅の売却 | 家庭裁判所の許可が必要 |
| 相続税対策の生前贈与 | 原則できない |
| 家族のための財産の貸付 | 原則できない |
家族間トラブルが起きやすい場面
後見人になった親族が、他の兄弟から「使い込んでいるのでは」と疑われる。これは本当によくあります。
防ぐには、収支をオープンにし、報告書を兄弟にも共有するのが効きます。隠すほど疑われる、が私の現場感覚です。
候補者が却下されたとき・辞めたいときの対処法
「親族を候補にしたのに専門職が選ばれた」「引き受けたけど続けられない」——どちらも対処法があります。

申立てが認められなかった場合の不服申立て
後見を開始する審判そのものには不服申立て(即時抗告)の余地があります。ただし、「誰を後見人に選ぶか」という人選の部分には、原則として不服を申し立てられません。
ここを誤解している方が多い。候補者が通らなくても、後見開始の必要性が消えるわけではないんです。
辞任・解任の手続きと要件
後見人を引き受けた後でも、正当な理由があれば家庭裁判所の許可を得て辞任できます。自分の病気や転居などが典型です。
一方、不正があれば解任されます。辞任は許可制で、勝手に投げ出せない点に注意してください。
親族と専門職の共同後見という選択肢
実は、後見人は一人とは限りません。親族と専門職が共同で就く形も選べます。
日常の世話は親族、財産管理は専門職、と役割を分ける。私はこの形を勧めることが多いです。親族の関わりを残しつつ、お金まわりの不安を減らせるからです。
家族を後見人にしたいなら知るべき制度の選び方

「どうしても家族に任せたい」なら、認知症が進む前の準備がカギです。成年後見制度には法定後見と任意後見があり、別に家族信託という手もあります。
法定後見・任意後見・家族信託の比較
ざっくり違いを表にします。本人の判断能力が「今あるか」で使える制度が変わります。
| 制度 | 使うタイミング | 後見人・受託者を誰にするか |
|---|---|---|
| 法定後見 | 判断能力が低下した後 | 家庭裁判所が選ぶ(親族とは限らない) |
| 任意後見 | 判断能力があるうちに契約 | 本人が信頼する家族等を指名できる |
| 家族信託 | 判断能力があるうちに契約 | 本人が信頼する家族に財産管理を任せられる |
認知症になる前にできる予防的な準備
家族を後見人にしたいなら、本人に判断能力があるうちに任意後見契約を結んでおくのが一番確実です。本人が「この人に頼む」と指名できます。
財産の管理だけが目的で、相続まで見据えたいなら家族信託も検討に値します。逆に、判断能力が落ちてからでは、もう任意後見も家族信託も使えません。動くなら早い段階です。
市民後見人や中核機関など新しい担い手
近年は、市区町村が育成する市民後見人や、地域の相談窓口となる中核機関といった担い手も広がっています。
親族も専門職も難しいという地域では、まず市区町村の窓口や地域の中核機関に相談するのが現実的な第一歩です。
成年後見人と親族の条件に関するよくある質問
相談でよく受ける質問を、出典で確認できる範囲だけ正直に答えます。

よくある質問
最後に一つだけ。親族が後見人になれるかどうかで悩む前に、「本人にとって誰に任せるのが一番安心か」を家族で話してほしい。私が父の件で痛感したのは、制度より先に家族の合意だ、ということでした。迷ったら、申立て前に一度、専門家に相談を。
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