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成年後見制度の申立て手続き完全ガイド|流れ・費用・必要書類を6ステップで解説

梶田 涼子 / 更新:2026-06-20
成年後見制度の申立て手続き完全ガイド|流れ・費用・必要書類を6ステップで解説
親の認知症が進んで、預金が引き出せない・施設の契約ができない――そんな壁にぶつかって「成年後見制度」にたどり着いた方が多いと思います。結論から言うと、申立て自体は自分でもできますし、家庭裁判所に必要書類を出すところから始まります。

ただ、一度始めると原則として途中でやめられない、親族が後見人に選ばれるとは限らない、といった「知っておかないと後悔する点」もあります。

この記事では、申立ての流れを6ステップで、費用の内訳や必要書類、却下されるケース、代替制度まで、私が司法書士事務所の補助者として10年以上関わり、実際に自分の父の申立てを経験した目線でまとめます。

成年後見制度の申立て手続きとは?まず押さえる基本

法定後見~申立てに必要な書類と費用~13[成年後見制度について]
法定後見~申立てに必要な書類と費用~13[成年後見制度について]

成年後見制度は、認知症や知的障害などで判断能力が十分でない人の財産や生活を、本人に代わって守る仕組みです。家庭裁判所に申立てをして、後見人などを選んでもらいます。

申立て先は本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。ここを間違えると受理してもらえないので、最初に確認してください。

法定後見と任意後見の違い

成年後見制度は大きく2つに分かれます。判断能力が既に低下した後に使うのが「法定後見」、元気なうちに自分で備えておくのが「任意後見」です。

今まさに親の判断能力が落ちていて、預金や契約で困っている――という相談のほとんどは法定後見の話です。任意後見は、本人が元気なうちに公正証書で契約を結んでおく必要があります。

法定後見と任意後見の違い
項目法定後見任意後見
使うタイミング判断能力が低下した後元気なうちに準備
誰が後見人を決めるか家庭裁判所が選任本人が契約で選ぶ
スタートの手続き後見開始の申立て契約締結→監督人選任の申立て

後見・保佐・補助の3類型と選び方の基準

法定後見はさらに「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれます。違いは本人の判断能力がどの程度残っているかです。

判断の目安はシンプルで、日常の買い物すらほぼ難しいなら後見、重要な契約に支援が要るなら保佐、ほぼ自分でできるが一部不安があるなら補助です。実務では医師の診断書がこの振り分けの決め手になります。

後見・保佐・補助の選び方の目安
類型本人の判断能力後見人等の主な権限
後見ほとんど判断できない財産に関するすべての法律行為を代理
保佐著しく不十分重要な行為に同意・取消
補助不十分特定の行為に同意・代理(本人の同意が必要)

裁判所の案内では、成年後見人は本人の財産に関するすべての法律行為を本人に代わって行えるとされています。後見類型はそれだけ権限が大きいということです。

申立てから開始までの所要期間と難易度の目安

気になる期間ですが、一般向けの解説では、申立書類の提出から審判まで2〜3か月程度かかることが多いという案内があります。これは公式の標準処理期間ではなく、鑑定の有無などで前後します。

難易度は、正直に言うと「時間はかかるが、書類さえ揃えば自分でもできる」レベルです。一番の山場は書類集めと申立書の作成で、ここを越えれば後は裁判所の進行に乗るだけ。審判が確定すれば後見が始まります。

申立てができる人・成年後見人になれる人の範囲

「誰でも申立てできるわけではない」――ここでつまずく人がいます。申立人になれる人は法律で決まっており、後見人になれない人にも一定のルールがあります。

申立てができる人・成年後見人になれる人の範囲

申立人になれる人と市区町村長申立て

申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族などです。親や兄弟姉妹、子、おじおばなどが含まれます。

困るのが、身寄りがなく申立てできる親族がいないケース。この場合は市区町村長が申立人になれる仕組みがあります。一人暮らしの高齢者などで、まず役所の窓口に相談する流れになります。

本人が認知症で意思確認できない場合の注意点

「本人がもう会話もままならないが大丈夫か」という不安はよく聞きます。意思確認が難しくても申立てはできます。むしろ判断能力が大きく低下しているからこそ後見類型が選ばれます。

ただし家庭裁判所の調査官が本人と面談したり、後述の鑑定が行われたりすることがあります。本人の状態が重い場合は、面談を自宅や施設で行う配慮がされることもあります。

成年後見人の欠格事由と親族が選ばれにくい実態

後見人候補に親族の名前を書いても、必ずその人が選ばれるわけではありません。これが制度の誤解されやすいところです。

破産者で復権していない人、本人に対して訴訟をした人などは欠格事由に当たり、後見人になれません。また財産が多い・親族間で意見が割れているといった事情があると、司法書士や弁護士などの専門職が選ばれる傾向があります。

私が関わった案件でも、申立人が「自分がやるつもり」で来たのに専門職後見人が付いた例は少なくありませんでした。希望が通らない可能性は、最初から織り込んでおいたほうがいいです。

申立て手続きの流れを6ステップで解説

ここからが本題です。申立ての全体像を、書類準備から登記完了までの流れで追います。前提として、本人の住所地を管轄する家庭裁判所が窓口です。

申立て手続きの流れを6ステップで解説

家庭裁判所によっては来庁日時の電話予約が必要なので、行く前に必ず確認してください。これは厚生労働省の案内でも示されています。

1.必要書類の準備と申立書の作成

最初のステップは書類集めと申立書づくり。ここに一番時間がかかります。申立書の様式は裁判所のサイトからダウンロードできます。

ここまでで、申立書・戸籍・住民票・診断書・財産目録などが一式そろっていれば正しく進んでいます。詳しい取得方法は後の章でまとめます。

2.家庭裁判所への申立て

書類が揃ったら家庭裁判所に提出します。申立手数料は収入印紙800円分、登記手数料は収入印紙2600円分です。

もし登記印紙2600円分を既に持っている場合は、当分の間それで納付できると案内されています。古い印紙が手元にあるなら無駄にせず使えます。

提出が受理されると審理が始まります。申立後、裁判所から事情を尋ねられることがあるので、連絡には早めに対応してください。

3.面談調査・鑑定の実施

申立て後、調査官による面談が行われます。申立人や本人、後見人候補者から事情を聞く手続きです。

さらに、本人の判断能力について鑑定が行われることがあります。鑑定には別途費用がかかり、後見・保佐では鑑定料の多くは10万円以下です。鑑定がなければこの費用は発生しません。

4.審判と成年後見人の選任・後見の登記

審理が終わると、家庭裁判所が後見等の開始の審判を出します。このとき同時に成年後見人等が選任されます。後見人を選ぶ別手続きはありません。

審判に不服があれば即時抗告ができます。即時抗告がなければ、告知の2週間後に審判が確定し、その時点で後見が始まります。

確定後、登記は家庭裁判所の嘱託により東京法務局で行われます。自分で登記申請をする必要はありません。選任された後見人には登記事項証明書が後の手続きの「身分証」になります。

なお選任された後見人は、原則1か月以内に財産目録と収支予定表を作って家庭裁判所に提出します。これで一連の手続きが完了し、後見の実務がスタートします。

申立てに必要な書類と取得・記入のコツ

法定後見~申立て手続きの流れと申立て時の留意事項~12[成年後見制度について]
法定後見~申立て手続きの流れと申立て時の留意事項~12[成年後見制度について]

申立てでつまずく最大のポイントが書類です。裁判所案内で挙げられている主な書類は、申立書、本人の戸籍謄本、本人の住民票または戸籍附票、成年後見人候補者の住民票または戸籍附票などです。

戸籍・住民票・財産目録などの取得方法

戸籍謄本は本籍地の市区町村、住民票は住所地の市区町村で取れます。本籍と住所が違う人は取得先が分かれるので注意してください。

主な必要書類と取得先
書類取得先ひとことメモ
申立書裁判所サイトでダウンロード様式は管轄裁判所で確認
本人の戸籍謄本本籍地の市区町村本籍と住所が違う点に注意
本人の住民票(または戸籍附票)住所地の市区町村マイナンバー記載なしで取得
後見人候補者の住民票候補者の住所地の市区町村候補者を立てる場合
財産目録自分で作成通帳・残高証明をもとに記入

財産目録は通帳のコピーや残高証明書を見ながら作ります。コツは「申立て時点」で金額を揃えること。日付がバラバラだと裁判所から確認が入りやすいです。

診断書と本人情報シートの準備

類型を決める根拠になるのが医師の診断書です。本人のかかりつけ医に、裁判所所定の様式で書いてもらいます。

あわせて、福祉関係者が本人の生活状況をまとめる「本人情報シート」を用意できると、診断書の精度が上がります。ケアマネジャーや相談員に依頼するとスムーズです。

鑑定が必要になる条件と費用・期間の実例

鑑定は必ず行われるものではありません。診断書で判断能力が明確なら省略されることが多く、診断書の内容に疑義がある場合などに行われます。

前述のとおり、後見・保佐で鑑定が行われる場合の鑑定料は多くが10万円以下です。鑑定が入ると、その分審理期間も延びると考えておくと安心です。

申立て費用の内訳と総額シミュレーション

「結局いくらかかるの?」は誰もが気にする点です。確実に言える公式の金額と、状況で変わる費用に分けて整理します。

申立て費用の内訳と総額シミュレーション

申立て時にかかる費用の内訳

申立てそのものでかかる印紙代は、申立手数料800円分と登記手数料2600円分。ここは裁判所案内で確定している金額です。

申立て時の費用の目安
項目金額出典の有無
申立手数料(収入印紙)800円裁判所案内で確認
登記手数料(収入印紙)2600円裁判所案内で確認
鑑定が行われる場合の鑑定料多くは10万円以下厚労省案内で確認
戸籍・住民票の取得費用各数百円自治体により異なる

印紙代だけなら数千円。ここに戸籍・住民票の発行手数料や、必要なら鑑定料が加わります。鑑定がなければ総額は思ったより低く収まります。

成年後見人の報酬と長期的なランニングコスト

正直に言うと、本当に重いのは申立て費用より「その後」です。専門職が後見人になると、報酬が継続的にかかります。

後見は本人が亡くなるまで続くのが原則。後見人は少なくとも年1回、本人の生活や財産の状況を家庭裁判所に報告します。この管理が続く限り、報酬負担も続くという長期目線が欠かせません。

報酬額は家庭裁判所が本人の財産などをもとに決めます。具体的な金額は事案ごとに異なるため、ここで断定的な数字は書きません。気になる場合は管轄の家庭裁判所の手続案内で確認してください。

自分で行う場合と専門家に依頼する場合の比較

申立てを自分でやるか、司法書士などに頼むか。私の経験では、書類集めが苦でない人なら自分でできますが、親族間でもめている・財産が複雑なケースは専門家に任せたほうが結局早いです。

自分で申立て vs 専門家に依頼
観点自分で行う専門家に依頼
費用印紙代・実費中心で安い別途依頼報酬がかかる
手間書類集め・作成を全部自分でほぼ任せられる
向いている人書類が揃えやすい単純なケース財産が複雑・親族間で対立

迷うなら、まず市区町村の窓口や家庭裁判所の手続案内で相談してみるのがおすすめのスタートです。無料で全体像をつかめます。

知っておきたいデメリットと却下・取り下げになるケース

メリットばかりではありません。私はこの制度を勧めることが多い立場ですが、デメリットを伏せて勧めるのはフェアでないと思っています。

知っておきたいデメリットと却下・取り下げになるケース

利用後にやめられない問題と長期的な影響

最大の注意点はこれです。「預金を下ろす目的が済んだから後見をやめたい」は、原則として通りません。後見は本人の判断能力が回復しない限り続きます。

つまり一度始めたら、本人が亡くなるまで報告義務と(専門職なら)報酬がついて回る。目先の手続きだけを見て始めると「こんなはずでは」となりがちです。

申立てが却下・取り下げになる例と対処法

却下や取り下げが起きるのは、診断書で後見の必要性が認められなかったケースや、申立人の希望と裁判所の判断がかみ合わず申立人自身が取り下げるケースです。

対処法はシンプルで、申立て前に診断書の内容と類型が合っているかを確認し、後見人候補が希望どおりにならない可能性も受け入れておくこと。事前相談で見通しを立てれば、無駄な取り下げは減らせます。

家族信託・日常生活自立支援事業など代替制度との比較

目的によっては、後見以外の選択肢のほうが合うこともあります。元気なうちの資産管理なら家族信託、日常的なお金の管理や福祉サービス利用の支援なら日常生活自立支援事業が候補です。

成年後見と代替制度のざっくり比較
制度主な目的使えるタイミング
法定後見判断能力が低下した本人の保護判断能力が低下した後
家族信託元気なうちの資産管理・承継判断能力があるうち
日常生活自立支援事業日常のお金の管理・福祉利用の支援判断能力が一定残っている人

私の考えでは、すでに判断能力が大きく落ちているなら法定後見一択になりますが、まだ元気なら家族信託や任意後見を先に検討する価値があります。

申立て前に確認するチェックリストとよくある質問

法定後見 申立書の作成方法④ 17[成年後見制度について]
法定後見 申立書の作成方法④ 17[成年後見制度について]

最後に、動き出す前の確認事項と、読者からよく聞かれる質問をまとめます。ここを押さえれば、家庭裁判所に行く前の準備は十分です。

申立て前に準備すべきチェックリスト

行動に移す前に、次が揃っているか確認してください。

申立て前チェックリスト
確認項目内容
管轄の確認本人の住所地の家庭裁判所を特定したか
来庁予約電話予約が必要か確認したか
診断書かかりつけ医に所定様式で依頼したか
戸籍・住民票本人・候補者分を取得したか
財産目録通帳・残高証明をもとに作成したか
印紙800円+2600円分を用意したか

2025年以降の制度見直し・法改正の動向

成年後見制度は「使ったらやめられない」点などへの批判を受け、見直しの議論が進んでいます。ただ、本記事の時点で確定した改正内容を断定できる一次情報は手元にありません。

ここで未確定の数字や時期を書くと読者をかえって混乱させます。最新の動向は、利用を決める前に家庭裁判所の手続案内や厚生労働省の案内で必ず確認してください。

よくある質問(FAQ)

よくある質問

成年後見制度の申立て手続きとは?
認知症などで判断能力が十分でない本人のために、家庭裁判所に後見人などを選んでもらう手続きです。申立て先は本人の住所地を管轄する家庭裁判所で、申立書・戸籍・住民票・診断書などを提出します。
成年後見制度の申立て手続きの費用は?
申立手数料が収入印紙800円分、登記手数料が収入印紙2600円分です。加えて戸籍・住民票の取得費用がかかり、鑑定が行われる場合は鑑定料(後見・保佐では多くが10万円以下)が別途必要です。
成年後見制度の申立て手続きの始め方は?
まず本人の住所地の家庭裁判所を確認し、来庁予約が必要か問い合わせます。次に裁判所サイトから申立書をダウンロードし、戸籍・住民票・診断書・財産目録を揃えて提出すれば手続きが始まります。

私から最後に一つ。後見は便利でもあり、重い制度でもあります。目先の手続きだけで決めず、まずは家庭裁判所の手続案内に一度足を運んで、全体像を確かめてから一歩を踏み出してください。

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梶田 涼子

元司法書士事務所勤務(補助者として後見申立て案件に10年以上関与) ・ ファイナンシャルプランナー2級(相続・資産管理分野)
司法書士事務所勤務歴10年以上

司法書士事務所での補助者経験と、自身の父親の成年後見申立てを経た実体験をもとに、制度の仕組みから費用・期間・手続きの流れまでを一次情報に当たりながら書いています。専門用語を使わず、今すぐ動けるレベルまで噛み砕くことを心がけています。

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